非侵襲の排尿カテーテル【Purewick】

アメリカの医療現場のリアルを知る #1 Purewick

こんにちは。今日はアメリカの医療現場では当たり前の【Purewick】をご紹介します!

Purewickと書いて、ピュアウィックと読みます。日本では聞き馴染みないですよね。私も実際に働くようになってから「こんな便利なものがあるのか!」と心底びっくりしたのを今でも覚えています。

日本でも是非取り入れてほしい便利ツールNo.1なので、紹介させて頂きますね♪

Purewickにのみ興味のある方は、目次から該当部分だけ呼んで頂けたらと思います。

そもそも排泄ツールにはどんなものがあるのか

入院時の疾患(病気)や症状、ADL(普段どのように日常生活を送っているのか)によって、医師・看護師は患者さんに必要な排泄ツールを挿入もしくは指定します。

主要な排泄ツールは以下が主流です。

  • 膀胱留置カテーテル
  • 尿瓶
  • ハット
  • 差し込み便器
  • ポータブルトイレ
  • オムツや尿取りパッド

※膀胱瘻などは今回は省略します

膀胱留置カテーテル

例えば心不全などの心臓疾患で入院される方、血圧の厳重コントロ―ルや安静が必要な脳疾患の患者様、手術前の患者様などには、膀胱留置カテーテルといって尿道からカテーテルを挿入します。尿量の管理を厳密に行いたい時なども使用します。

しかし、長期にわたって膀胱留置カテーテルを使用すると尿路感染症(UTI)を合併症として患ってしまう可能性があるため、出来るだけ早くに抜去するのが鉄則です。

ちなみに日本では「バルン」と呼ぶことが多いです。

アメリカでの膀胱留置カテーテル事情

アメリカでも膀胱留置カテーテルはもちろん使用します。呼び名は日本とは異なり、Foley Catheter(フォーリー、もしくはフォーリーキャーセラー)と言っています。日本でも沖縄の病院ではフォーリーと呼んでいるようですね。

アメリカ、もしかしたら私の勤めている病院だけかもしれませんが、膀胱留置カテーテル由来の感染症(catheter-associated urinary tract infection :CAUTI)は病院側が責任と取らなくてはならず、CAUTIの治療にかかる費用は全額病院負担と聞きました。

そのため膀胱留置カテーテル管理や抜去後のルールが明確化されており、不必要に膀胱留置カテーテルを挿入することはまずありません。

ルールを一部ご紹介すると、

①膀胱留置カテーテルを挿入中の患者さんは1日2回必ず専用の清拭シートを使用してカテーテルケア兼陰部洗浄を行わなくてはいけない

※私の病院では“ReadyCleanse Perineal Care Cleansing Cloth”というWipesを使用しています。気になるかたはググってみてください☺

カテーテル抜去後は、必ず排尿後にブラッダースキャン*を実施する。抜去後4時間以内に排尿がなかった場合もブラッダースキャンする必要がある。

※ブラッダースキャンとは小さな超音波検査のようなもので、簡単に膀胱内の尿量を非侵襲的にチェックすることが出来ます

排尿後ブラッダースキャンの数値が一定以下であればOK、400ml以上であれば導尿、400ml以上が数回続けば膀胱留置カテーテルを再挿入…というルールが明確化しています。

そもそもアメリカの患者さんは入院期間が日本と比べてぐっと少ない印象ですが、1年程度循環器病棟で働いている中では、1件もCAUTIを患った患者さんに合ったことがありません。(日本では正直沢山看てきました。)

尿瓶

尿瓶は右図のような入れ物のことを指します。上が男性用、下が女性用です。

使い方は簡単、陰部に尿瓶の口をあてて排尿するだけです。

女性よりも男性が多く使用する印象があります。

主に尿量測定が必要な方や、トイレまで行くことが難しい患者さんがベッドサイドで排尿するのに使用します。

アメリカでも使い方は同じです。尿瓶はUrinal(ユーリノル)と呼んでいます。日本との違いは、アメリカでは尿瓶はディスポです。1患者1つは当たり前、使用後は後腐れなくゴミ箱にシュートしています。

日本では洗浄後に次亜塩素酸ナトリウムで消毒後に再利用するため、当初はディスポであることに驚きました。

ハット

医療業界では日本でもアメリカでもハット(Hat)と呼んでいるのですが、トイレの便座下に敷いて尿量を測定します。

分かりにくいイラストで心苦しいですが😭、トイレに行くことが出来、尿量測定が必要な患者さんが利用します。

尿瓶と同様、日本では要消毒&再利用、アメリカではディスポです。

そもそもアメリカでは汚物室/消毒室のようなものが存在しない気がします。

差し込み便器

差し込み便器はベッド上安静もしくはADL上トイレに行くことが難しい患者さんが排泄するのに使用します。

文字通り、おしりの下に右図の便器を差し込んで使用します。

アメリカではBedpan(ベッドパン)といい、薄いベッドパン(fracture bedpans)、厚いベッドパン(bariatric bedpans)、大きな人用のベッドパンなど種類がいくつか存在します。

ポータブルトイレ

ポータブルトイレは在宅でも使用する方がいますが、ベッドサイドに置くことが出来る移動式のトイレのことです。

立位は可能だけども歩行は難しい、という方が使用されることが多いです。

アメリカではCommode(コモード)といい、Unit内に10個以上はストックされています。日本にいる時は2つしかストックがなかったため、すごい量の違いだなと感じました。

オムツや尿取りパッド

寝たきりの方やトイレまで行くことが難しい方は、日本の場合オムツ内失禁で対応することが多いのではないでしょうか。

日本の病院で働いていると、2時間毎にオムツを確認しオムツ交換を行う、という業務が発生します。腰も痛くなる看護業務の1つですよね。

アメリカの病院でびっくり仰天したのは、オムツはあっても、尿取りパッドがないことです。Long term care(特養のような施設)にはあるのかもしれませんが、日本では尿取りパッドだけで数種類病棟に備蓄していた環境だったため、「え!パッドなくてどうするの?!」と驚きました。

このパッドの代わり(になるかは疑問ですが)がPurewickです。

Purewick(ピュアウィック)は床上排尿の便利ツール

実はPurewick、女性用のみ日本にも流通している所があるようです。Websiteを見つけました。

日本ベクトン・ディッキンソン株式会社 https://www.bdj.co.jp/ucc/purewick

Purewickとは、吸引器に繋げることで、非侵襲的に尿を吸引先のキャニスター(吸引瓶)に回収するツール・システムのことを指します。カテーテルを尿道から挿入する必要もないため、尿路感染症(UTI)のリスクも下がり、オムツが濡れることも少なくなるため、褥瘡予防にも効果があります。

しかし、吸引器を使用するため在宅などでは難しく、吸引施設の整った施設内でのみ使用することが出来ます。

女性用Purewick(ピュアウィック)

女性用Purewickは左図のような形状をしています。中央に吸引ホースが通っており、その周りを綿のような柔らかい素材で筒状に覆っています。排尿したら綿が尿を吸収し、吸引ホースを通じて吸引瓶に流れていくシステムです。

水色の部分はシリコンで出来ており、強度を保つ役割や、オムツを濡らさない役割を持っていると推測できます。

使用方法は簡単、Purewickの綿部分が女性の尿道口にあたるように置き、吸引器に繋ぐだけです。

私の同僚はホットドッグ🌭に例えていました…笑

このPurewickを使用することで夜よく眠ることが出来ると喜ぶ患者さんが多くいます。

しかし気を付けなくてはいけないのが、たまにPurewickが上手く働かないことがあるという点です。そもそもPurewickの当て方が悪かったり、体動でPurewickがずれてしまった、吸引がかかっていなかった、等の理由でオムツ交換・ベッドシーツ交換を行ったことがあります。

しかしきちんと吸引がかかっていることを確認し、尿道口にしっかりPurewickをあてれば、Purewickの働きぶりは本当に有能です。患者さんはオムツを濡らさずに快適に眠ることが出来ます。

1日2回Purewickを交換する必要があり、定期的にPurewickがきちんと作動しているか確認しなくてはいけませんが、アメリカの病院では非常にメジャーであり、CNAとしても排尿管理がぐっと楽になるなという実感があります。

アメリカのベクトン・ディッキンソン社に女性用Purewick使用方法のビデオがありましたので、こちらを見ていただけるとイメージがより湧くかと思います。

PureWick™ Flex Directions for Use https://www.bd.com/en-us/videos/purewick-flex-directions-for-use

男性用Purewick(ピュアウィック)

男性用Purewickはバッグのような形をしています。小児用採尿バッグに吸引システムをプラスしたようなイメージです。

陰茎をこのバッグに差し込み、バッグを陰茎の周囲に貼り付けます。その後吸引チューブを繋げればOKです。

男性の場合テープで貼り付けるため、人によっては剃毛を必要とする場合があります。

綺麗に張り付けることが出来れば漏れることは少なく、かなり優秀な非侵襲排尿システムです。

男性の場合1日に1回バッグの交換が必要とされています。また、テープで貼り付けるため、スタッフの技術力によっては固定が甘く、漏れてしまう可能性があるため、きちんと貼り付けて吸引がしっかりかかるか確認する必要があります。

こちらもアメリカのベクトン・ディッキンソン社に男性用Purewick使用方法のビデオがありましたので、気になる方は覗いてみてください。

Video demonstrating how the PureWick Male External Catheter works https://www.bd.com/en-us/videos/purewick-male-how-it-works-video

Purewickのメリット・デメリット

メリット

  • 陰部周辺を清潔に保つことが出来る
  • オムツに尿を溜め込まないため、UTI予防になる
  • オムツが汚れないため、褥瘡予防になる
  • 尿量を計ることが出来る
  • 尿検査に尿を簡単に採取することが出来る(米の場合、清潔なものにフル交換すれば尿倍もOK)
  • 頻回なオムツ交換が不要のため、患者さんの安眠や休息を促すことが出来る
  • 頻回なオムツ交換が不要のため、マンパワーを削減できる
  • 患者さんの満足度が高い(患者さんからPurewick使用のリクエストがあることも◎)

デメリット

  • 場合によってオムツに漏れることがあり、結局オムツ交換が必要になることがある
  • 吸引システムのある環境下でしか使用することが出来ない
  • 男性の場合テープで貼り付けるため、交換時にテープをはがす不快感や痛みが生じる場合がある
  • ライン類が1つ増えるため、不穏患者さんの場合抜去する可能性がある。

メリットの方が圧倒的に多いですね!日本では高齢者がどんどん増えていくので、是非多くの日本の病院でPurewickを取り入れてくれたらきっと現場のナースは仕事が多少楽になるのに…!と思わずにはいられません。

実際にPurewickを使用したケアを実施しているアメリカCNAの視点からお伝えすると、おすすめ度120%です!

周辺国の医療現場のいいとこ取りして、日本のナースが少しでも楽になればいいのになあと思います☺

その他:コンドームカテーテル

コンドームカテーテルは、文字通りコンドームのような形をしている非侵襲的排尿カテーテルです。

日本でもあるにはあるようですが、あまりメジャーではないようですね。アメリカでもPurewick使用率の方が圧倒的に高く、コンドームカテーテルはそれほど多くは使用していない印象です。

使用方法は、サイズの合ったコンドーム状のカテーテルを陰茎に被せ、排尿バッグにチューブで繋げれば完了です。下腿に排尿バッグを取り付ける人もいれば、膀胱留置カテーテルバッグのようなバッグに繋げる場合もあります。

使用上の注意ですが、包皮をめくった状態で装着してしまうと嵌頓包茎になってしまうリスクがあるので、包皮はめくらずに装着することが重要です。

おわりに

いかがでしたか?排尿ツールは日本と同じものもあれば、異なるものもあり面白いですよね。

個人的にPurewick推しなので、是非日本でも流通してくれたら嬉しいなあと思います。

今後もアメリカの医療現場のリアルについてのんびりお伝えしていきます♪

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